エレファンテック 技術ブログ

フレキシブル基板製造開発ベンチャー企業 エレファンテック(旧:AgIC)株式会社の技術ブログです。

「低温はんだは壊れる」は昔の話!低温はんだとはんだの歴史

基板

こんにちは、代表の清水です。ブログ第一弾は低温はんだについてです。弊社で製造している印刷フレキシブル基板 P-Flex™(旧AP-2) は低温はんだと組み合わせて使うことが多いため、よくご質問頂く部分です。
はんだとは
さて、低温はんだの前にそもそもはんだとは何でしょうか?はんだとは金属同士を接合するために用いられる合金で、融点が450°C以下のものを指します。接合したい金属と金属の間にはんだをはさみ、融点より高い温度をかけることではんだを溶かして金属同士を接合します。
はんだは実は色々なところで使われており、ブリキの接着、水道管の接合などにも使われていますが、ここではプリント基板の上に電子部品を固定するために用いるはんだについてお話したいと思います。
共晶はんだと鉛フリーはんだ
プリント基板に用いるはんだは、「融点が低く」「強度が大きい」ものが望ましいとされ、歴史的に融点184°Cの共晶はんだ(スズ63%、鉛37%)がよく使われてきました。融点が低いほうが望ましいのは、はんだ付けの際の必要なエネルギーが減ること、繊細な電子部品に高温をかけなくて済むことが主な理由です。
ですが現代に入り、鉛の有毒性が注目され、2006年にはついにRoHS指令として、EUでの鉛入りはんだの使用が原則として禁止されました。そこで利用されるようになったのが鉛フリーはんだです。鉛の代わりに銀、銅などを用いることで、鉛を用いずにできるだけ融点を下げたものです。
RoHS指令を解決した鉛フリーはんだですが、「鉛が使えない」という制約のため、融点が200°C以上と高くなってしまうという問題がありました。融点が高いとはんだ付けに必要な温度が250°Cなどに上がってしまい、はんだ付けのコストが上がってしまいます。
低温はんだ
それに対し、ビスマスやインジウムなど全く別の金属を加えることで、融点を劇的に下げることができないかという研究が行われてきました。そういったアプローチで開発され、融点がおおよそ共晶はんだより低いもの(184°C以下)が低温はんだです。ただ残念ながら、RoHS指令施行の2006年時点の技術では、
・高価な金属が必要でコストが見合わない
・脆い、高温高湿耐性が悪いなど、耐久性に難がある
といった問題があり、低温はんだがメインストリームになることはありませんでした。この時、一部で「低温はんだは脆くて使い物にならない」というような悪いイメージが形成されてしまいました。
低温はんだの見直し
RoHS施行から10年後、材料技術の発展により、再び低温はんだに注目が集まるようになってきました。10年前はとても使い物にならないと言われていた低温はんだの強度・コスト・耐久性などが劇的に改善し、また融点も180°Cよりもさらに低いものも現れてきました。
そんな中、2017年2月、中国Lenovo社から大きなリリースが発表されました。ノートパソコン用基板の製造プロセスに融点140°C台の低温はんだを採用し、プロセスの温度も180°Cとこれまでより70°Cも低くすることに成功したということと、なんとそれが既に2016年から製造されているThinkpad X1 Carbonに既に搭載されているというものでした。
http://www3.lenovo.com/jp/ja/news/article/2017-02-07
当時、低温はんだについては水面下での利用が広がっていましたが、ノートパソコンのような高信頼性が要求される製品で、しかもプロセス温度を既存のものより一気に70°Cも下げることに成功した、ということが公表されたのは初めてでした。プロセス温度を70°Cも下げられれば、プロセスコストを劇的に下げられるだけでなく、基板や部品に対するダメージも減るため、不良率も下げることができます。
低温はんだのさらなる展開
低温はんだにはもう一つ大きな利点があり、それは低温でプロセスが可能なため、耐熱性の低い素材でできたプリント基板を利用することができるということです。
ここでようやく弊社が製造するフレキシブル基板の話になります。弊社が印刷+無電解銅めっきで製造するフレキシブル基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)をベース素材としています。弊社が用いているPETは耐熱PETですが、それでも耐熱性は既存の基板に比べれば低く、従来の鉛フリーはんだで250°Cといった温度ではんだ付けをしようものなら、たちまち歪んでしまいます。
ではなぜ弊社はPETをベースにしたものから始めているのでしょうか?実は、ここまで記載した低温プロセス化への流れを見込んでのものでした。
現在、弊社のPETベースのフレキシブル基板 P-Flex™(旧AP-2)は、Lenovo社でも使われているような融点140°C台の低温はんだを用いて180°C程度でリフローする、というプロセスを採用し、十分にはんだ付けが可能となりました。さらに今では、一般のプリント基板実装工場でも低温リフローに対応して頂けるところが増えてきたため、より簡単に部品実装対応が可能になりました。
今後、こういった低温はんだの利用はどんどん広がっていき、特に高い耐久性が必要な部分(例えば常時150°Cの高温にさらされるなど)を除けば、低温はんだがメインストリームとなっていく可能性は高いと考えられます。もしまだ低温はんだを使ったことが無いという方がいらっしゃれば、是非使ってみて下さい。クリームはんだだけでなく、糸はんだでも低温はんだが一般的に入手できるようになっています。
余談ですが、低温はんだをもし手はんだする場合、こて先は必ず通常のはんだ用と分けるようにして下さい。これは低温はんだに限らずですが、複数のはんだの材料が混ざると不良の原因になります。

(清水信哉)

   

 

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